自信は危険【アスクラボメールマガジン】

mailmagazine201306

ある落語家が寄席ではじめての演目を披露しました。その演目は観客に大変受けて、落語家はうれしく思うとともに、「この演目は観客に受ける」と自信を持ちました。しかし、別の寄席で同じ演目を披露したところ、今度はまったく受けませんでした。落語家は、はじめて披露した寄席で観客に受けた演目が、別の寄席で受けなかったという原因をつかみたくて、自分自身の行動を思い出してみました。

 そして、次のようなことに気が付きました。最初の寄席では、はじめて披露する演目ということで観客の反応を注意深く見ながら話を進めていました。しかし、次に披露した別の寄席では、「この演目は観客に受ける」という前提で進めたため、観客の反応を注意深く見ることを忘れ、自分のペースで進めていたのです・・・。これは、何気なくつけていた車のラジオで聞いた話しですが、ビジネスでも同じことが言えると思い頭に残っていました。

 人は、自信がなく不安なときは相手を注意深く観察し、聞き手である相手のペースやタイミングで話を進めますが、自信があると相手の反応を観察するよりも自分のペースで話を進めてしまいがちです。ビジネスにおいて新しい商品・商材を販売する場合、新規サービスを提供する場合はどうでしょうか?最初は自信がない(確信が持てない)ため、相手(市場・お客様)の反応を観察しながら商品・商材、サービスを作り販売します。しかし、ある程度実績が得られてくると、相手(市場・お客様)の観察や反応より、目先の実績につながる数字情報や自社の効率化・生産性を重視してしまい、市場からの乖離が始まるのではないでしょうか。経験を積んで実績を得て自信を持つことは決して悪いことではありません。しかし、市場・お客様の反応(情報)をなおざりにするような自信は危険なのです。

 情報がなおざりにされると市場のニーズはつかめません。落語家が持った自信が、結果として観客の反応をなおざりにしてしまったように、企業において情報がなおざりになってしまう状況や原因をいくつかあげてみます。

・時間の経過とともに忘れてしまう。
 営業の相手である市場・お客様の反応を、日常的に一番感じることができるのは現場の担当者ですが、人間は悪 意なく時間の経過とともに、聞いたことや言われたこと、思ったことを忘れて しまいます。つまり、日常の営 業活動を通して得た市場・お客様の情報が、活かされることなく埋もれて“なおざり”にされてしまいます。

・会議の場で時間がとれない。
 会議の場が、上司の指示・命令・伝達と、実績数字のチェックに時間を割かれてしまい、現場が感じたお客様の 反応や市場の情報についての議論はほとんど行われません。そのため、実績数字に直結しない情報が“なおざ  り”にされてしまいます。

・組織階層が邪魔をしてしまう。
 組織の階層に阻まれて、役職ルートを通じて現場の情報が上層部に上がるほど、その中身が徐々に薄まってしま い、本来の情報が“なおざり”になってしまいます。

市場のお客様の反応(情報)の重要性を認識し、経営マネジメントに活かすことができなければ、市場のお客様のニーズをとらえた商品・商材、サービスの提供はできません。それは、企業の競争力低下を意味するのです。

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙