「中小企業にシステムが売れない」との声が高まっている。 最近の景気低迷で、中小企業は想像以上に弱体化し、いままで以上に 投資対効果にシビアになっている。そこに従来同様の提案をしても 価格競争を激しくするだけだ。新しい収益源の獲得に向けては、 システム・プロバイダが変わらなければならない。

川嶋 謙/アスクラボ社長

最近、メーカー系販社の会合に出席すると、よくこんな会話を耳にする。

「メーカーの担当者と顧客を訪問しても、提案したいシステムの話をなかなか聞いてもらえない。話を聞いたとしても『価格はいくらか』しか興味がないように感じる。加えて、ハードの販売などは競合が激しく利益はほとんど上がらない。何をどのように提案すれば興味を持ってもらえるのか全く分からない」。 「昔は良かった。コンピュータというだけで新製品がいくらでも売れていたし、業務改善を名目にしたシステム開発の仕事がいくらでもあった」。

ところが、ユーザーに話を聞くと、こうだ。
「最近、どこのメーカーの提案も似たり寄ったりでさっぱり差別化ができていない。提案されるシステムも、それを導入することで何がどのように改善されるのかメリットが見えない。どれを導入しても同じならば、投資対効果を考えるので安いシステムのほうがよい」。

ここ数年間、コンピュータ販売業界は、インターネットの普及によるIT(情報技術)革命によってその恩恵を享受できるはずであった。しかし、インターネットが家庭にまで急速に普及したにもかかわらず、販売店に大きな恩恵をもたらすことはなかった。逆に、ハード販売やソフト開発に価格競争をもたらし、利益を大きく落としてしまうという経営にはむしろマイナスの影響を与えている。販売店経営者のぼやきとして、上のような話がよく聞かれるようになったのであろう。

収益モデルが崩壊するディーラー・ビジネス

当社は、NECの販売会社としてスタートし、この4月2日に社名変更するまでは、カワシマ商事と称していた。創業当時に売るものがはっきり決まっておらず「何でも売ってやろう」といったところから「商事会社」と名付けた。

NECのオフコンを売り、ハードの保守契約で保守料をとり、そのオフコンに載せる業務ソフトを開発し、アプリケーションのサポート費用を徴収するという、何重にも利益の上がる構造があったことは読者も経験済みだろう。さらに、プロプライエタリ(独自)の世界だったので、一度導入したシステムは他者との競合も侵略もなく、継続的に利益を上げられる仕組みになっていた。

しかし、システムのオープン化が進み、ハードにもソフトにも垣根がなくなった。それに歩調を合わせて競合も厳しくなり、ハードそのものの売り上げも利益率も逓減してきたのである。さらに、ここ1~2年は、ソフト開発業務も減少傾向に転じてきている。こうした業務内容で将来構想を描こうとしても、地域性から考えてみても先細りの業態であると判断せざるを得ないのが実情だ。

ところが、景気の低迷が長引くにしたがって増えてきたものがある。中小企業の経営者からのシステム開発の有効性についての相談である。「この場面に、このシステムを導入すると、どれくらいの効果があるのだろうか?」という相談だ。従来、システムの有効性についてユーザー側から「この場面に、こんなシステムを導入してくれ」と指定され、その要望に適合したパッケージを探すか、適合するソフトがなければ新たに開発すればよかったのである。

想像以上に弱体化した中小企業の経営

こうした変化の背景を中小企業の経営者から直接聞いてみると、想像以上に中小企業の経営そのものが弱体化してきていることがある。これまでは、中小企業も業務の効率化を目指し、情報化の流れに追従という名目で資金を重点的にシステム投資に回してきた。しかし、これまでになく厳しさを増してきた最近の経済状況下では、システムに対する投資効果を大変厳しく追及するようになってきたのである。中には今まで社内にあったシステム部門自体を閉鎖してしまったユーザーも出てきている。

とはいえ、こうした経済環境の中でも、どうしてもシステムを導入しなくてはならない場面はある。その時に経営者が、本当に必要なシステムを最低限の投資で導入したいと考えるのは当然の流れだろう。そこに多くのディーラーやソフト開発業者が、ユーザーからすれば「どれも同じに見えるシステムを提案してくる」というわけだ。もちろん、それぞれの提案にはそれぞれの優位性や特徴があるし、中には本当に業務改善につながるシステムもあるはずだ。だが、それらを判断できない経営者や、システム部門を持たなかったり、その要員を減らした企業の経営者にすれば、自社に適合したシステムを選択することなど、ほとんど不可能になっているのである。

そうなると、経営者はシステムを導入するに当たり、自社への有効性を重視することよりも、導入費用を重視するようになる。そこで起こるのが価格競争である。ある意味では、ユーザー企業の置かれる環境の変化を認識せず、従来の収益モデルのままにシステムを提案し続けてきたシステム・プロバイダの提案活動そのものが、今日の価格競争の引き金を引いたことになる。

一方で、中小企業のユーザー経営者も本当に価格だけで選んで良いのだろうかと悩んでいるのも事実である。そこで当社は、そういった経営者の相談に乗り、悩みを解決するためのコンサルティング業務を始めたのである。

当社も以前は、ユーザーに選択される側にあったし、社名変更以前は販売会社の域を出ることができなかった。顧客の側にしても、商事会社に業務改善のコンサルタントを依頼することには違和感があったようだ。最近は、今まで利益を得られなかったシステム導入にかかわる要件定義も「業務改善コンサルティング」の名目で利益を生むようになってきた。

販売会社のぼやきは一見、悲観的に感じられるが、ユーザー企業とは現在も、それが細くなったとはいえIT関連サービスのプロへの期待の糸がつながっている。その糸を太くさえできれば、今後のビジネスチャンスに結びつく可能性は十分に残されているのである。

本連載では、当社が、なぜコンサルティング業務に乗り出せたのか、その過程で何を得たのかについて紹介していく。

※この記事は日経BP社の許可を得て「日経システムプロバイダ」2001年8月3日号p98-p99より転載したものです。