直感とデータ【アスクラボメールマガジン2016年4月4日号】

企業の継続的な発展にITは欠かせないものとなりました。しかし、ITはあくまで人が利用するものであり、人とITが上手くリンクしなければ相乗的な発展はありえません。

私は「ITだからできること」(ITが勝っていること)と「人間だからできること」(人間が勝っていること)があると思っています。例えば、人は一般的に昔の出来事より最近の出来事の方をよく覚えています。過去のことは印象が薄くなり直近のことの方が印象に残りやすいというのは、ある意味では人間の弱点と言えるかもしれません。それに比較するとITは過去のことも直近のことも同じ「データ」として扱うことができ、印象の強弱は発生しません。また、人間の判断には少なからず感情が入りますが、ITの判断は感情が入らない・客観的なデータに基づいてなされます。このように人間の弱い部分や苦手な部分をITでカバーすれば、ベストな関係が構築できると私は思っています。

以前のメールマガジン(※)でも取り上げたことがありますが、お客様に「ITは直感に勝てるか?」と問われたことがあります。20年以上も前のことですが、ある金融機関のトップが「私は直感で経営をしているが業績は良い。その直感にITは勝てるか?」と問われたのです。私は「たしかに「経営」という総合的な面に関しては、ITより直感の方が勝っていると思います。ただしその「直感」は引き継ぐことが不可能です。企業経営は継承が必須です。ITが持つデータや資料は引き継ぐことが可能です。それがITの良いところです。」と答えました。

IT関係の業務を営む身ではありますが、私自身がITのデータありきではありません。「何か変だ、何か気になる」という感覚的に引っかかるような直感が先ずあり、その裏付けをとるために、データを調べる・比較するなどITを利活用して確認を行います。そして多くの場合その直感は当たるのです。しかしながら、ITに勝る直感もまれに外れる場合があります。外れる場合の傾向として、「実際に経験しているかどうか」ということが大きく影響しています。自身の知識として実際に経験していれば直感は当たりますが、経験のないことに関しては外れる傾向にあるのです。

「直感」とは決して「やまかん」ではありません。物事が上手く運ぶ場合の状況を、関係者の表情や話し方、環境や雰囲気を通じて経験として身につけているため、わずかな表情や話し方、雰囲気の違いを、本人が意識しないままに経験というデータベースから引き出して比較して得た結果が「直感」となっているはずなのです。しかし、経験が乏しいとITデータに頼らざるを得ません。ITデータへの依存が強まると、本来は人間がやるべきことまでITに頼るようになります。

弊社は、大手企業を中心に「営業研修」を行っていますが、主に営業管理者、SE管理者を対象とし受講者数は2,500名を超えました。受講された方の多くは「考える力」は非常に長けていますが「感じる力」(直感)は弱くなっているように感じます。IT化により知識やデータはふんだんに与えられるものの、実際にそれらを経験すること自体が少ないためかと思っています。

ITに頼りすぎると人間の強みである「直感」を磨く機会が損なわれます。磨く機会がなければ「直感」がいずれ退化していくのではないかと危惧しています。新たな商品開発や新たなアイデア、他社に先行するビジネスモデルを構築するためには「感じる力」・「直感」が不可欠です。

企業の継続的な発展には、「ITだからできること」と「人間だからできること」のどちらも必要なのです。

※2013年11月メールマガジン 思い出に残る商談 「引き継げるもの・引き継げないもの」https://asclab.com/mailmagazine20131101/

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙