印象に残った商談2 相手の求める価値【アスクラボメールマガジン2024年9月号】
〜商談成立のためには「相手の求める価値」を提供する〜
商談成立のために「相手の課題を掴むことが必要」ということは営業の場面において 常識となっています。多くの提案では「業務上の問題点」を取り上げ、自社システム で時間短縮・工数短縮ができるという点を強調しています。情報システム部門への説 明の場合は、そのような提案が受け入れられやすいかもしれません。しかし、その提 案スタイルでは既存顧客との取引拡大や新規開拓は難しいと考えておられる企業幹部 の方も増えています。もっと上位の決裁権を持つ経営層にアプローチする必要がある と考えられています。経営層にアプローチするためには、通常の業務をする視点より も一段視野を広げて俯瞰した提案が求められます。今回のメルマガでは実際の営業場 面でのその一例をご紹介したいと思います。
以前ある金融機関で理事長・役員・管理者を含め、渉外のシステム化提案のプレゼン をハードウェアメーカーの担当者と一緒に行った時のことです。プレゼンの最中に理 事長が「当行はフェイス トゥ フェイスの対応をモットーとしているのでシステム 化を進めるつもりはありません。」と発言されました。金融機関の役員・管理者の 方々は沈黙してしまいました。当時まだ若かった私は思わず「理事長はそうおっしゃ いますが御行のお客様もフェイス トゥ フェイスの対応を望まれていると、確認を されているのでしょうか?」と言ってしまいました。
その場は非常に気まずい雰囲気となってしまい、自然解散となりました。メーカーの 担当者も私も「この商談はもう駄目だな。」と思いながら帰りました。しかし数日 後、理事長の秘書の方から「理事長が面談したいそうです。」という連絡を頂きまし た。流れが変わったのかと期待して訪問すると、面談で理事長は「私はこれまで自分 の直感を信じて当行の経営を行ってきて、自己資本比率含め優良金融機関です。当行 のお客様でも直感で経営している優良企業が多くあります。あなたはシステムが直感 に勝るというのですか?」と冒頭から喧嘩腰でした。私は「直感といっても理事長や 優良企業の経営者の方の判断は、それまでの経験や学び・知識に裏付けされたもので あって山勘やあてずっぽうではないはずです。システムが直感に勝るとは私も考えて いません。ですが直感は次の世代に引き継げるものではありません。理事長はいつま で理事長を務められますか。理事長をはじめ、幹部の方々の経験や知恵を次の世代に 引き継いでいくためにシステム化は有効だと思います。」と発言してその日の面談は 終わりました。
その後いろいろとやり取りがあり、最終的に商談を受注することができました。この 商談についてはじめは「効率化」をテーマに提案を行っていましたがプレゼン以降は 「後継者への引継ぎ」というテーマに弊社が提供できる価値を変更して、その後の提 案を行いました。商談を成立させる為には「相手の求める価値」を理解し、「求める 価値を提供する」ことが必要なのだと改めて感じた商談でした。商談だけでなく、ク レーム対応においても相手側の納得を得る為に上記が不可欠です。余談ですが、この 時に同行したメーカーの担当者は現在では著名な国会議員と
なっています。「営業」は人と人とが対面し、真剣に話し合う活動でもあるので大変 な場面も多いですが人間的に成長させてくれるものでもあると思います。
アスクラボ株式会社 会長 川嶋 謙

