mailmagazine201305

以前のメールマガジンでも紹介しましたが、私は以前、京都大学の医師や医療機関等とがん治療法の一種である「免疫療法」を研究する会社を設立し、その会社の代表を現職との兼任で約10年間務めました。そのおかげで、多くの医療機関・ドクターと交流をさせていただき、がん治療という分野を基に医学の世界を垣間見る機会に恵まれました。

がん治療には様々な方法がありますが、多くの場合は手術・抗がん剤使用という治療法が一般的に周知されているのではないでしょうか。抗がん剤は直接がん細胞を攻撃する有効な方法ですが、がん細胞を攻撃するのと同時に正常な細胞も攻撃するため副作用が生じます。

私が代表を務めていた会社で研究していた「免疫療法」は、人間が元来持っている免疫機能に着目した治療法で、体内に細菌やウィルスが入るとそれらを排除しようとして免疫活動が活発になるという仕組みを利用して、その免疫機能を薬剤によって刺激を与えて活性させ、能力をより引き出そうとするものです。
※2012年8月7日メールマガジン「企業の免疫力」http://asclab.blog46.fc2.com/blog-entry-81.html

私の身内や親類にもがんを発病した者がいますし、がんを発病した知人もいます。がんの手術後、抗がん剤治療を行った知人が2人、がんの手術後、前述した会社の協力医療機関にて免疫療法で治療を行った身内と親類が2人いますが、4人ともに現在も元気に生活しています。

しかしながら、前者の2人と後者の2人では、がんが治癒したという点では同じですが、今現在の元気さと言う点では後者の2人の方が上回っています。その理由は、おそらく最終的にがんを治癒させたのが本来自分自身に備わっていた免疫の潜在能力、つまり自分の力によるものだったからではないかと思われます。

話しを変えますが、企業や組織において、上司がスタッフに対してダイレクトにスキル不足や欠点を指摘・アドバイスすると、スタッフは上司の意図や指摘の本質を理解する以前に、「怒られないようしよう」あるいは「上司の機嫌を損ねないようにしよう」と、とりあえず従います。その繰り返しの結果、スタッフ個々が自分自身で事象を理解し考えて対応するのではなく、上司の指示により行動する「指示待ち人間」となってしまいます。

これは、ある意味で「抗がん剤治療」と同じではないかと思うのです。上司がダイレクトに指摘する=ダイレクトにがん細胞を攻撃すると、がん細胞を攻撃するとともに副作用が生じて、人間が本来持っている正常な細胞も弱らせてしまい、がんが治っても万全な状態=指摘やアドバイスの本質を理解し、自ら考えて行動する状態にはならないと思うのです。

上司がダイレクトに指摘・アドバイスすることも必要なことであるとは思いますが、いろいろな情報で刺激を与えて、スタッフ自身の潜在能力を引き出す「免疫療法」のような対応が、スタッフ育成のための基本になると私は考えます。

人は、いくら他人に指摘やアドバイスを受けても、自分自身でそれが理解できて自分の中で組み立てができなければ自ら行動はできません。人間の病気が治るというのも、最終的には自分自身の治癒する力(免疫機能)によるもののはずです。その人の潜在能力を引き出すことが、スタッフ育成には不可欠なのです。

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙