私が子どものころ、「デパート」という響きには非常に高級感がありました。
近所のお店で購入する商品とデパートの包装紙で包まれた商品では、同じ商品であっても受け取る側に大きな印象の違いがあり、それはやはり、デパート自体が持っていた「高級」というイメージが影響していたかと思います。

最近そのデパートは、売り上げの減少が続き苦戦しています。
そして、デパートと同様に「高級」というイメージで支持されていた、ブランド品や高級車なども苦戦が続いている状況です。
これは、不況・景気低迷の影響に加えて、市場がつける「価値・価格」に変化が生じた結果であると私は思います。
例えばブランド品のバッグ。本来のバッグの目的は、当然ながら物を入れて持ち運ぶための入れ物なのですが、本来の目的に「ブランド」という高級感が付加され、そのイメージに対して市場が価値を認めていたのではないでしょうか?
もちろん、イメージだけでなく作りの良さや高品質な素材にも価値を認めていたかと思いますが、そのブランド品のバッグ同様に、デパートで購入する商品に関しても、デパートという一種のブランドイメージ、高級感がプラスされ、市場がその価値を認めていたのだと思います。

しかし、ここ数年のデパートの売り上げ状況などを見ると、ブランドや高級といったイメージに対して、市場が決めていた価値が変化し、その結果、商品が商品自体の本来の価格に近づいているように思います。
経済的に「ゆとり」や「余裕」があるときは、ブランドや高級といったイメージに対し、市場はその価値・価格を認めてくれます。しかし、景気低迷の続く現状では、企業は生き残るために必死、個人も生活のために必死であり、イメージよりも商品本来の目的が最優先されているのだと思われます。

このような「市場が決める価値・価格」の変化は、ビジネスの現場でも生じています。

複数のユーザ様より、こんな話を聞きます。
「大手ベンダーにプレゼンを依頼すると、そのプレゼンには担当者をはじめ7~8名がぞろぞろと来社する。
来社した人数分のコストが見積りに含まれているのを想像すると、意味のない高い見積りになるのが当たり前だと感じる。」

そして、大手ベンダーの管理職・現場スタッフの方々からは、こんな声をよく聞きます。
「商談はあるのだけど、なかなか受注につながらない。」
この話は、市場である買い手側が決める(認める)価値・価格について、売り手側がその本質の変化に気付いていないことを顕著に表しています。

つまり、市場の認める価値が変化した現在において、以前のままの見積り内容ではその価値が認められなくなっているのです。
企業は競争力を向上させるために、原価の低減に取り組みながら生き残りに必死です。
そのような状況であるのに「大手」というブランドを掲げた対応をしても、現状の市場ではイメージに対する価値・価格が認められないのは前述の通りです。
顧客にとっては、要望するものが、品質よく、低コストで手に入れることができれば、「大手」や「ブランド」というイメージは優先されるべき要素ではないのです。
中小企業・国内外の企業を問わず、本来の目的を効率よく達成できるところへ顧客からの注文が流れていくのは自然の現象であり、事実、その現象はかなりのスピードで広まっているのです。

「商談はあるのだけど、なかなか受注につながらない。」
市場が価値・価格を決めるという流れの本質に気付いていないのは、「ブランド」イメージを持たれていた当事者の方々なのではないでしょうか。

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙