私の父は、自動車販売会社で経営に携わっていました。子供の頃から父の仕事を見てきたため、私の中での「営業」というイメージ形成に大きな影響があったと思っています。
当時の自動車会社では、「予算」ではなく「ノルマ」という表現をしていました(その当時は自動車販売会社に限らず他の企業でも同じだったかと思います)。訪問件数や販売額の「ノルマ」ありきで、お客様に適したものを販売するというよりも売手側に都合のよいものを売り込むという営業のイメージでした。そんなイメージもあって「積極的な営業マンが自社の製品を売り込んで注文を取る」のが営業力だと思っていました。

アスクラボを設立した際も同じパターンの営業スタイルを継承し、積極的で話し上手な人を営業スタッフとして探していました。しかし、イメージとして刷り込まれた営業力に対し、「何か違う・・・」という違和感を常に持ってもいました。おそらく、具体的にはなっていなかったものの、自分自身が目指している会社として・組織としての本当の「営業力」というものが深層にあったからだと思います。

その後、コンピュータ販売やシステム開発を手掛けるようになり、お客様への提案営業がメインとなっていきました。
その当時、営業がシステム案件について提案書作成を技術(SE)に依頼し、技術が提案書を作成していましたが、その案件を営業が受注してきても技術ではあまり反応もなく、「システム案件を受注したら技術は迷惑なのか?」というような話が営業部内であがる状態でした。技術の立場からすれば、提案時には「SEさん提案書をよろしく」、受注をしたら「あとはSEさんよろしく」といった丸投げに近い営業の対応に、不満を蓄積させていたのです。
一見、組織として相互に協力しているようでも営業部と技術部は不仲で、部署間には溝が生じ、当然の結果、システム構築においてもトラブルが多発し、企業としての損失も大きかったのです。

そのような状況を目の当たりにし、「何か違う・・・」と思っていた、会社としての営業力・組織としての営業力について、自分自身の目指すところが明確になり、社内の情報共有に取り組みました。

商談発生時から営業・技術で情報を共有することにより、早い段階から商談に対して技術から意見や質問が出るようになりました。もちろん、その意見や質問も「情報」として組織で共有されます。商談の進捗とともに営業・技術の行動と対応、お客様の状況をリアルタイムで共有し、お互いの状況を理解することもできました。
お客様とのやり取りに勘違いが生じた場合やトラブルが発生した場合も、営業と技術が一緒になって対応し、その結果、商談が進むにつれて営業と技術との連携も深まり、受注時は営業とともに技術も喜び、その喜びは以前より増した感じさえします。逆に失注した場合は悔しさも増したように思います。

現在では、大きなシステムトラブルもほとんどありません。お客様の紹介により新たな取引先も増えています。情報共有が軌道に乗ったころから、本来の「営業力」を理解し、営業力強化のための一筋の道が見えてきた気がしています。

「積極的な営業マンが自社の製品を売り込んで注文を取る」のも確かに営業力かもしれません。しかし、極端な表現をすれば、とびぬけて営業センスのよい優秀な営業スタッフはいなくても、会社として情報共有をはじめとする仕組みを作れば、組織としての連携により企業としての営業力強化は可能であると思っています。

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙