最近の中堅管理者層の方々は非常に勉強熱心で、ビジネスにおけるテクニカル的な知識や情報を豊富に身に付けていらっしゃいます。自己研鑽し、テクニカル的な知識や情報が豊富に備わるのは大変よいことなのですが、その反面、少し気になっていることがあります。

かなり以前ですが、弊社でこんなことがありました。
営業とSEの管理者が、お客様へのトラブル対応について相談に来たことがあります。
それはシステム上のトラブルだったのですが、彼らの説明を聞いていて私は違和感を覚えました。
説明によると、今回のシステムトラブルの原因が弊社にあることは明らかでした。
しかし、彼らの相談の内容は、お客様に対して「弊社に原因がないように説明するにはどうしたらよいか」というものだったのです。
彼らの説明に違和感を持ちつつ、私は子どものころに親や先生から言われたことを思い浮かべていました。それは「うそをつかない・約束を守る」ということです。
説明を終えた彼らに対し、私は違和感を抱いたそのままをストレートに伝えました。

君達のやろうとしていることは、みんなで相談してうそをついて、お客様をごまかす方針を決めようとしていることではないか?
仮に、今回それで当社の責任を免れたとしても、将来的に必ずもっと大きな被害を受けることになるのではないか?
なぜなら、君達の判断を君達の後輩や部下、若いスタッフ達が見ているからである。
君達は、後輩や部下達に対して「今回のようなトラブルが起きたら、みんなで集まってお客様をごまかす方法を考えなさい」と教えているようなものではないか?
そのような文化が引き継がれたら当社の将来はない。
私達は子どものころ、「うそをつかない・約束を守る」ということを教えられて、うそをつくことは悪いことで、約束を守らないことは人に迷惑をかけることだと当たり前に 思っていたはずだ。
成長とともにいろんな知識が身につき、社会人になり大人になるにつれて、その「当たり前」だった意識が薄らいでいくのはなぜだろう?

私の言葉に、彼らもハッとして表情が変わりました。それぞれに自覚するところもあり、お客様に対して正直に弊社の非をお詫びすることで話はまとまりました。

さて、冒頭の内容に戻りますが、ビジネスにおけるテクニカル的な知識や情報を身に付けることは、推奨すべきことであり間違いではありません。しかし、最近気になるのは、テクニカルな面や知識・情報ばかりが優先されてしまい、ビジネスの基本とも言える「信用・信頼」の面で、不安を感じる人材が増えているように思うのです。
お客様からの信用はもちろん、部下、スタッフ、チーム、上司の信頼なくしては、ビジネスは成り立ちません。豊富な知識や情報を備えていても、信用・信頼がなければ相手に受け入れてもらうことはできず、宝の持ち腐れとなってしまいます。
信頼・信用を得るためには、子どものころに当たり前に思っていた「うそをつかない・約束を守る」ということが、当たり前にできることが原点だと私は思います。

さて、例にあげた弊社のトラブルの件ですが、後日談があります。
お詫びをした後、そのお客様より「お宅の社員は正直ですね」という評価をいただくこととなり、最終的には弊社・弊社社員に対して確固たる信用・信頼を得ることができました。

そして、このトラブルを基に、弊社には副産物としてプラスの文化が残りました。
その一つが、決めたことへの継続性です。

弊社の全社員が利用しているPROナビ(※)は、導入して約7年が経過しました。
このPROナビは、各スタッフの日々の情報登録があってこそ、その効果がより発揮されるシステムなのですが、正確に日々情報を登録するという約束を全社員が継続しているため、商談の進展状況も正確に把握できています。
受注状況も厳しく、経営課題もまだまだ沢山ありますが、PROナビを通して事実に基いた対応策を検討できる状況が、弊社には構築できています。

※PROナビ:弊社開発の組織営業力強化システム

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙