失うもの得るもの 〜経験を活かす〜【アスクラボメールマガジン2023年11月号】
現在、高年齢者の雇用については次のようなルールになっています。(厚生労働省HP より)
1.65歳までの雇用機会の確保
2.70歳までの就業機会の確保
定年については「従業員の定年を定める場合は、その定年年齢は60歳以上とする必要 があります。」となっていますが、少子高齢化や将来的な国の社会保障に多くの人が 不安を感じている中、上記の年齢は今後もさらに引き上げられていくのではないかと いう気がしています。当然企業にも高齢者を含めたマネジメントが求められます。
ある程度の年齢を過ぎると運動神経・反射神経・体力・記憶力は低下します。逆に得 るものとして経験という大きな武器があります。経験という人間の持つデータベース とIT技術を活用すれば、加齢とともに低下していく部分を補完することが可能だと 思っています。車の運転にしても、高齢者が若い時と同じ感覚で操作すると事故の確 率が高くなります。私は若い時に自動車レースに参加しており、そこで通常よりも極 限に近い状態の運転技術を多少学びました。サーキットは日常使う道路とは違い、安 全第一ではなく速さを競う場です。そこで競技中の事故や車の挙動が限界を超える と、運転手の力では制御できないということを経験しました。運転操作の中で最も難 しいのは走っている車を短い距離で静止させることです。その経験から、「安全に止 める」ことを常に意識した運転をしています。
高齢になると、若い時に比べ運動神経・反射神経が低下しますので、それを補うため に経験から来る予測が必要です。例として、前の車だけではなく、その前の車も見 て、その車のブレーキランプが点けば直前の車も減速すると予測すれば反射神経の低 下を補完することが可能と思います。
ビジネスにおいて「経験を活かすということ」の一例ですが、以前社内のシステムが ダウンし、若いSEが対応しましたが復旧させることができず、ベテランのSEが対応し て復旧することができました。若いSEの経験知だけでは原因の可能性を推測すること が出来ず、それより数多くの障害を経験しているSEが知識を補完することで解決がで きました。個人の能力ではなく経験知の差です。個人それぞれの経験するものはそれ ほど多くありませんが継続的に運営されている組織が経験するケースは膨大です。経 験知は活用されなければ無価値です。人間の記憶は時間の経過に比例して薄れて行き ますがITを使えば情報として整理し、残していくことが可能です。経験知をデータと して整理して蓄積、組織内で活用することで過去の失敗やその対応が大きな武器 となります。
少子高齢化の時代、経営を続けて行けば多くの企業において高齢化は避けられない事 象と思われます。従業員の平均年齢が比較的若く、市場のニーズや流行に素早く対応 していく企業もありますが企業としての経験知が少ない場合、スピーディーな動きが 諸刃の刃となることもあります。各企業が自己の企業の長所と短所を知り、その部分 を補っていくマネジメントが必要だと思います。弊社では市場のニーズに機敏に対応 していく為、又、組織として各商談や納品・サポートの過程で経験していることを 「PROナビ」※に社員各自が随時登録し、必要な場合に過去に登録された類似した案 件の情報を検索して自身の経験を補うために使っています。客先で得た市場の「最新 情報」と案件への「対応情報」を全社共有のシステムに登録し、情報の活用をするこ とで「高齢化」にも対応できる企業風土作りを日常業務の中で行っています。
アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙 date:2023/11/01