先日、久しぶりに師と仰ぐご住職の説法を聞く機会がありました。その中で印象に残っているのが「使わない能力は退化する」という言葉でした。 仏教の「お経」はなぜ繰り返し唱えるのかというと、繰り返し唱えることによりその お経についての理解が深まるからだそうです。つまり、繰り返し・たびたび唱えるということはお経を理解する能力を向上させるのです。

例えば、意見の違いでいつもすぐに感情的になる人は、「感情的になる」という能力は向上しますが「冷静になる」という能力は使われないため低下します。同様に、いつも人の欠点ばかりを見つける人は、「欠点を見つける」という能力は向上しますが「長所を見つける」という能力は使われないため低下します。
現在、多くの企業において、風土や文化の改善・改良にトライする、あるいは新しいことに挑戦するチャンスが減少しているのではないでしょうか?つまり、改善・改良にトライする・新しいことに挑戦するための能力が低下しているのではないでしょうか?その結果として、新たなビジネスモデルの構築や今までにないアイデアが生まれにくい環境になっているのではないでしょうか?

弊社でPROナビ(※)を開発した当時のことです。銀行より開発資金融資の申し入れがあり、大変ありがたい話でしたが、私は融資を受けることは無理である旨を伝え丁重にお断りしました。
開発資金の融資を受けた場合、商品が完成したときの販売見込数や売上見込金額を聞かれます。正直にその数字を言ったとしても、それは希望的観測による想定の数値であり、正確なものではありません。また、PROナビが完成してもそれは弊社の思想・考えに基づいた商品であり、市場に受け入れられるかどうかは不明です。
市場に受け入れられるまで改善・改良を継続する覚悟でしたが、一旦、融資のための販売見込数や売上見込金額を数字として文字にしてしまうと、その数字に基づいた報告を出さざるを得なくなります。つまり、元々の数字が希望的観測による正確な数字ではないので、不正確な数字に基づいた進捗報告を銀行に対して行うこととなるのです。
そのような不正確なやり取りに時間を費やすより、商品の開発、マーケティング、販売活動に時間を費やした方が成功の可能性が高くなると思ったのです。

このようなやり取りは融資の場合のみではなく、商品開発や新たなアイデアにおいても同じです。担当者が、新商品や新たなビジネスモデルを上申しても、上からは実行時のメリットや売上の見込額・利益の見込額を聞かれます。新商品や新たなビジネスモデルに関して、正確な数字を答えられる人はまずいません。
結果として上申すること自体が減少し、新たに考える・企画するという能力が低下するのです。
また、金融機関の融資の判断や企業で上申された内容の判断は、それぞれ上層部の「見極め能力」つまり「事業性の判断」が求められますが、目先に見える数字中心で対応していては見極める能力も低下していきます。そして、目先の利益を追求するマネジメント能力が向上し、将来に対する対応能力が低下しているのだと危惧しています。

将来への対応能力を向上させるためには、その能力をたびたび使うことが必要です。PROナビによって収集・共有される情報を基に、経営陣、管理者、現場スタッフそれぞれが現状のリスクを共有し、改善・改良や新しいことに取り組む必要性を共有する
ことで、改善・改良へのトライや新しいことへの挑戦を継続し、企業としての将来への対応能力を向上させ続けたいと思っています。

※PROナビ
弊社開発のPROナビ(組織営業力強化システム)も、開発の目的は管理業務ではなく、お互いの情報を集めて、お互いの長所を伸ばし、お互いの弱点を少しでも克服するための人材育成を目的にしています。

「PROナビ」について http://www.asclab.com/service/pronavi/

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙