以前、歴史ある製紙会社へ組織営業力強化システムのプレゼンを行ったときのことです。ご年配のA社長をはじめ、経営層・管理者層の方々に向けてプレゼンを行っていたところ、A社長が突然、「私は、営業スタッフは時間があればお客さんの所へ行くのが大事だと思っています。だから、営業スタッフが机についてパソコンに入力などするのは嫌いです」と発言されました。弊社の組織営業力強化システムは、スタッフがパソコンに入力する日報データを情報として共有する仕組みであり、A社長の発言によってプレゼン自体を中止せざるを得ない状況になりました。やむなく帰り支度をしていると、A社長が「せっかく来られたのだからお茶ぐらいは飲んでください」と言って、自らお茶を淹れてくださいました。

お茶を頂きながら、私は何となく次のようなことをA社長に話しました。「A社長はこの会社の創立者ですから、製造過程から工場の隅々までよくご存知だと思います。また、取り引きしているお客様のこともよくご存じだと思います。しかし、次の世代はどうでしょう?次の世代はA社長と同じような情報は持っていません。A社長の頭の中で感覚的になっている情報を伝える手段を構築しなければ、おそらくその感覚は引継ぎができないのではないでしょうか?」A社長は少し考えられた後、「申し訳ないが、もう一度プレゼンを始めてくれないか」と言われ、帰り支度から一転、再びプレゼンを行うこととなったのです。

商談は、相手の求めるもの(求める価値)とこちらの提供できるもの(提供する価値)が一致してはじめて成り立つと私は思っています。この製紙会社へのプレゼンでは、最初は「売り手」と「買い手」の間で求める価値の同期がとれていませんでした。売り手側の提供する価値は「情報の共有」でしたが、買い手側はその価値を求めていないためプレゼンは中止となりました。しかし、お茶を飲みながらの何気ない会話の中で、売り手側の提供できる「情報の共有」という価値について、「経験・感覚の継承」あるいは「引継ぎ」と表現した結果、買い手側が求める事業継承と同期がとれたため、価値の交換が可能となりプレゼンが再開できたのです。

さて、日常のビジネスの現場においても、社内における経営者や管理者、現場スタッフとの指示・議論等においても、概ね目的は同じでも表現の違いや感情が入るため、お互いの価値の交換ができず結果として意図が通じないケースは多々あります。弊社開発のPROナビ(※)は、商談においてお客様の経営者層や管理者層、窓口スタッフの求めている価値・情報を入力することで、社内の関係者にその情報を共有(見えるように)することができます。加えて、売り手側の提供できる価値を社内の情報の中から集めて、お客様が求めている価値によりフィットした提案書を作成する支援も、PROナビの仕組みとしての目的の一つです。また、売り手側の社内において、役職や職種による求める価値の違いを、日常からお互いに少しでも理解することで人材育成に寄与することもPROナビの大きな目的です。

■PROナビ
弊社開発のPROナビ(組織営業力強化システム)も、開発の目的は管理業務ではなく、お互いの情報を集めて、お互いの長所を伸ばし、お互いの弱点を少しでも克服するための人材育成を目的にしています。
「PROナビ」について http://www.asclab.com/service/pronavi/

                     アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙