約10年前、弊社が組織営業力強化ソリューションを行う会社へと転換したときのことです。自社パッケージである組織営業力強化システム「PROナビ」の開発当初、ある金融機関の役職の方より「開発費用を融資しましょうか?」と声をかけて頂いたことがありました。大変ありがたいお話しでしたが、「融資でPROナビを開発することは無理である」と考えていたため丁重にお断りをしました。その理由は、融資を得るためには当たり前に必要とされることが、新製品開発という本来の目的からは離れると考えたからです。

金融機関から融資を得るためには、先ず「開発する商品について、開発後の定量的な売上予想計画の提示」が求められ、次に「売上予想計画に基づいた進捗の定期的な報告」が求められます。

融資の対象となるのは開発途中の新製品です。どのようなビジネスプランや売上予想を作成しても、それは「市場が受け入れてくれるであろう」あるいは「注文してくれるであろう」という作り手側・売り手側の希望的な予想でしかありません。融資を受ける前提となると、本来の製品開発という目的から離れ、融資を得るための計画を立ててしまいます。また、定期的な進捗報告は、売上予想計画の原点自体が本来の目的から離れているため、進捗報告も本来の目的から離れたものとなるのは必然なのです。

当時の私はPROナビの開発に関して、裏付けのない希望的な数字は考えていましたが、正直なところ「(製品として)成功するまでやる」という気持ちが強く、それは市場から必要とされるものを作るといった定性的なものであり、どのようにいくら売れるかという定量的なものではなかったのです。それでは金融機関も融資が困難であったと思います。

さて、「成功するまでやる」というのは根性論ではありません。実際に商品ができてお客様へアプローチを行うと、その商品に対する反応が見えます。つまりは、市場に受け入れられるであろうという仮説を立てて作ったものに対して、実際に検証した結果が見えてくるのです。売り手・開発側の仮設と実際に検証した結果で、その差が小さければ受注につながり、差が大きければ受注には結びつきにくくなります。つまり、仮説と検証結果の差を改善・改良していくことが成功への道であり、「成功するまでやる」という意味です。

多くの企業においても、先に述べた融資の例と同じようになってはいないでしょうか?現場から新たな商品企画やビジネスモデル案があげられたとき、「これが完成したらいつまでにどれくらい販売できるか」ということを企画書に記載することを求めていませんか?
・企画の成功ではなく企画の稟議を通すための企画書が作成される
・企画が許可されないので、現場が企画の提案自体を躊躇する

変化著しいビジネス環境において、このような企業風土が構築されると、企業としての競争力が徐々に削がれてしまいます。新たなビジネスモデルの構築を阻害している要因は、本来の目的を見失うことにあるように思います。

※PROナビ:弊社開発の組織営業力強化システム

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙