企業を経営する上で、予算・実績といった数字は絶対的なものであり、数字なくして企業の発展・継続はありえません。その数字を達成するためのマネジメントとして「数字の管理」が強化され、企業の発展・継続が成されれば問題はありません。しかしながら、目の前の数字だけをとらえた管理の強化には、企業の発展・継続にとってマイナスとなる副作用が生じる危険性が潜んでいます。

社員は、日常的に「評価=数字」という管理をされると、すぐに・確実に実績数字につながる行動をするようになります。企業で働いているのはマシンではありません。感情により行動が左右される人間が働いているのですから、評価されやすい行動を選択するのはやむを得ません。

例えば、新規の顧客開拓は敬遠されます。新規顧客の開拓より既存ユーザへの行動の方が、実績として数字が上がりやすいからです。新規開拓は会社の将来のために、そして新たな収入源を得るためには不可欠な行動ですが、すぐには実績として数字が上がりません。それよりも、既に構築された人脈があり、気心の知れた既存ユーザの商談を探す方が、評価としての数字を得る近道です。

その他にも、新たなスキルや知識の習得といった行動も少なくなります。新たな市場へ行動するためには、新たなスキルや知識を得ることが必要です。それよりも、成果としてすぐに実績数字を上げることができるように、いま自身が持っているスキルや知識のみで行動し、 そのレベルや範囲で対応ができている既存ユーザへとまた群がることとなります。その結果、月に1回の訪問でもよい既存ユーザに対して、月に2~3回も訪問するような行動をしがちになります。

数字による管理・マネジメントがなされていても、その内容に企業が発展し生き残るために必要な項目がすべて網羅されていれば何の問題もありません。しかし、残念ながらそのような評価基準は見たことがありません。将来への対策、将来のための学び、あるいは組織やチームのための行動などが評価されるべきこととして項目に入っていなければ、それらを意識した自発的な行動は生じ得ません。数字による管理の下では、目先の数字を追う行動かつ属人的な行動になってしまうのです。

お客様である企業は、変化する経済環境の中で様々な経営課題にさらされています。市場は常に変化しているのです。その変化に追従するのであれば、サービスや商品・商材にも変化が求められ、それらを扱うスタッフにも変化が求められます。そして当然のごとく、マネジメントにも変化が求められます。しかしながら、管理の強い企業の多くは、管理者を含めて目先の数字の管理・対応に追われてしまいます。
そもそも計画される予算自体、現場が提示した数字に上層部が望む数字が上乗せされるため、現場側から見ると根拠が不明確な数字が「予算」として計画されてしまうのです。そのような裏付けのない予算に対しても達成度のチェックは厳しく、また、不達の指摘と叱責の繰り返しがエンドレスとなる状況下では、最優先は目先の数字の対応となり、短期的思考に陥ってしまうのも当然です。

企業を経営する上では絶対的な数字ですが、そのマネジメントが目先の数字の対応だけでは、企業の発展も継続もありません。企業の将来にとって必要となる行動、すぐに実績数字にならないアイデアや知恵、将来のためのスキルアップ、新規顧客開拓のための行動、組織・チームや他のスタッフを支援するための行動等々、数字以外の項目をどのようにとらえ、またどのように評価するかが企業の将来を左右しかねないのです。

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙