弊社では企業向け研修を多く行っていますが、その中で「アクションカルテ」というものを利用した研修があります。アクションカルテとは、研修の参加者それぞれに、「進行中の商談」、「トラブル対応」、「部下のマネジメント」という項目の中から一つを選択してもらい、選択した項目についてその概要、対応の内容と結果、今後の対応策等を記入してもらったものです。

研修では、そのアクションカルテを基に皆で議論をするのですが、大変好評を頂いています。今までに実施した研修で、少なくとも500名以上の方にアクションカルテを記入していただきましたが、一番多く題材としてとり取り上げられるのは「部下のマネジメント」に関する内容です。中でも部下とのコミュニケーションに関する事項が大半を占め、よくあるケースは、上司と部下の認識の違いがコミュニケーションに影響しているというものです。例えば次のような認識の違いです。

上司は、指示命令も部下とのコミュニケーションととらえている。
上司は、部下に対する一方通行の話しであってもコミュニケーションととらえている。
しかし、部下はそれらをコミュニケーションととらえていない。

以前の弊社でのことですが、ベテランの管理者が新入社員に対して「君たちには仕事観がない。私なら、この場合にはこう考えて、このように対応する・・・」といったようなことをとくとくと話している場面を目撃したことがあります。私は、その管理者の発言に疑問を感じました。私がビジネス社会に入って40年ぐらいになりますが、入った当時にいきなり今の仕事観があったわけではありませんし、今のような対応をすることは不可能でした。先の場面で、新入社員を注意している管理者も、ビジネス社会に入った当時にキャリアを積んだ今とは同じようにはできなかったはずです。仕事を通じてお客さんに怒られたり、たまに褒められたり、失敗や成功を経験した上で今の仕事観ができ上がったはずだからです。ですから、この場面で新入社員と本当の意味でコミュニケーションをとるためには、この管理者は新入社員当時の自分に戻ることが必要なのです。

プライベートでも同じことです。私の子どもがまだ小学生のころ、テレビを見ている子どもに対して「テレビばかり見ないで勉強しなさい!」と、妻が注意していました。そのとき、妻に「自分が子どものときにどうだった?勉強をしたかった?テレビを見たかった?」と質問したことがあります。このケースでも親の立場ではなく、子どものときの気持ちに戻らなければ相手(子ども)のことは理解できず、あるべき論を一方通行的に話すだけとなります。それでは相手から見るとコミュニケーションは取れません。

弊社でも、事業の拡大を目指して新しい人材を求めていますが、人材育成について管理者と新入社員との間でコミュニケーションが取れるかどうかということは、他の企業と同様に大きなテーマです。私も当然、スタッフとのコミュニケーションが取れなければ、会社の業績に大きく影響を及ぼしますので、時間のある限りスタッフの日報を見ながら、当時の自分に置き換えて比較して、それをベースにスタッフとのコミュニケーション方法を考えて成長を見ています。

           アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙