私は以前、京都大学の医師や医療機関等とがん治療法の一種である「免疫療法」を研究する会社を設立し、現職との兼任でその会社の代表を約10年間務めました。

研究の内容を大まかに説明すると、人の血液からリンパ球を取り出してがん細胞と戦わせて、その人のリンパ球がどれくらいがん細胞を殺傷する能力を持っているかを測定するとともに、リンパ球をどのような薬剤で刺激をすればその殺傷能力がアップするかを測定し、免疫療法や免疫力向上によるがん予防に活かすというものでした(この測定方法については特許を取得しています)。

私がその会社の代表を務めていた間、延べ1,000人程度の方々のリンパ球について、その殺傷能力を測定したかと思いますが、リンパ球の殺傷能力には個人個人で差があり、またリンパ球の殺傷能力がアップする薬剤にも個々で違いがありました。

人間の体には、健康な人でも日に数千個のがん細胞が生まれていると言われていますが、その人に備わった自分自身の免疫力でがん細胞をやっつけて、病気としてのがんの発生を防御しています。
がんだけでなく、外部からのウイルスや雑菌等による攻撃についても、自分自身に備わった免疫力により防御して、健康を保つことができているのです。
ここで言う「防御」とは、通常と違う異物を見つける能力とそれを排除する能力ですが、防御機能が低下した場合に、がんや諸々の病気が防御の防波堤を超えてしまうのです。

この防御機能が低下する原因の一番手が、圧力・ストレスと言われています。

余談ですが、圧力やストレスによる防御機能の低下とは逆に、防御機能の向上=免疫力をアップさせるためには「笑い」がよいそうです。

さて、企業においてもリスクやライバルからの攻撃、トラブルの発生、社内の問題、市場の変化等々、がん細胞のように日に数千個とは言いませんが様々な問題の芽が日常的に生じ、外部からの攻撃にもさらされています。

企業やスタッフが健全であれば、問題の芽を早めに察知し、その状況をキャッチして対策をたてて防御できますが、実績数字の管理を中心とした目先のマネジメントにより上司から日常的に攻められ続け、ほめられることもほとんどなく、予算必達のプレッシャーをかけられて長くストレス状態が続くと、人体と同様に会社組織としての防御機能が低下し、攻撃にさらされやすく危険な状態に陥ってしまいます。

最近では、ストレスがたまってスタッフが無気力になり、本来備わっているはずの抵抗力が落ちている企業が多々あるように見受けられます。

売り手都合のマネジメントで対応できる市場は終焉に向かっています。買い手都合のマネジメントへの変更が必要であり、買い手の現状を社内の誰より知っているのは現場で対応するスタッフに他なりません。現場で接するスタッフを支援するマネジメントを行えば、スタッフのストレスが少なからず減少し、本来の防御機能が発揮され会社を救うことができるのではないでしょうか。

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙