今年いただいた年賀状の中に、強く印象に残った一枚がありました。
それは、大手ベンダーで専務を務められた後、現在では様々なSI企業の顧問をされている方からの年賀状で、年始のご挨拶に加えて次の一文が書かれていました。

 情報関係に携わっている多くの企業が、時代の変革について行けないようです。

私がITビジネスに携わって20年強、それぞれの時代とともに、市場とIT業界そのものを見てきました。その上で、いま改めて驚かされるのは、市場の環境はこの20年で大きく変化しているのに、IT業界では旧態依然としたマネジメントを行っている企業が多いということです。
まさに年賀状に書かれたIT業界の現状を憂う一文と同じ考えだったのです。

汎用機やオフコン販売が中心だった時代は、一度お客様に導入が決まると、その後は定期的に注文をもらうことができました。なぜなら、汎用機やオフコンはベンダーによってOS(オペレーティングシステム)が違ったため、ベンダーを替えるということは、資産であるソフトウェアが流用できなくなり、新たに作り直さなければならないというコストとリスクが発生することだったからです。そのため、お客様はベンダーを安易に替えることはできず、売り手側は顧客の「囲い込み」ができる環境であり、「囲い込み」を前提としたマネジメントが通用する時代でした。
しかし現在では、パソコンへとダウンサイジング化が進み、ベンダー毎にOSが違うこともなく、お客様は大きなリスクやコストをかけなくても、容易にベンダーを替えることが可能となりました。
このように、お客様の環境は変化しているにもかかわらず、売り手側は汎用機・オフコン時代と同じマネジメントを続けています。担当者を決め、定期的に訪問すれば注文がもらえるという「囲い込み」を前提としたマネジメントを行う管理者が多いのです。

また、IT業界が好調だった時代は市場も好景気であったため、お客様には数々の仕事が舞い込み、それに伴って業務もどんどん拡大していました。そのため、「それらの仕事をどう処理するか」ということがお客様の要望の主体で、売り手側に対して「処理」のためのリクエストを次から次へと提示していました。売り手側はお客様のリクエストに応える営業スタイル、つまり、「処理」を行うための「機能」を中心とした説明・提案を行っていれば受注・売上に結びついていたのです。
しかし、景気が悪化した現在、お客様が売り手側に望むものは「処理」を行う「機能」ではありません。企業として存続するために何が必要でどうしたらよいのかという、経営や業務に直結する「課題の解決」が求められているのです。
お客様の環境が変化し、お客様の要望も変化しているにもかかわらず、売り手側はお客様のリクエストに応えるテクニカル的な「機能説明」中心の営業スタイルから脱却できていません。さらには、課題の解決に不可欠となる業務知識も不足しているため、お客様との相談・コミュニケーションが成立しないといった事態に陥っているのです。 

企業の売上・利益は、売り手側の都合で上げることはまず不可能です。
企業の売上・利益は、市場がその企業を「どれだけ必要としているか」という証拠であると私は思います。

今回、IT業界に特化した出来事のようにお伝えしていますが、時代の変革・環境の変化はIT業界に限らず、ほとんどの業種に共通している問題だと思います。
時代の変革・環境の変化について行けないということは、ビジネス市場からの退場を求められていることであると、年賀状の一文を通して改めて感じました。

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙