日報は管理ではなく情報提供~テキストデータの有効活用~【アスクラボメールマガジン2021年11月号】

弊社は他社に対して後発というハンデがあったため、工数オーバーやトラブル等の損害を多く経験してきました。しかし、その「経験」をノウハウとして活用すれば、投資に変えることが可能であると思っています。また、営業スタッフやSEスタッフがつかむ現場の情報は、市場の状況や変化を身近で感じているため、とても貴重な情報であり、その「情報」を活用すれば、市場ニーズに合った商品開発ができると思っています。

「経験」や「情報」を活用するためには、それらを「会社のデータ」として残す必要があります。弊社の財産は10年以上にわたり、営業、SE、管理部門の全スタッフがPROナビ(※1)に登録している商談日報(受注、失注、トラブル対応、顧客対応等)と就業日報のデータです。現在40万件強(※2)のデータを保存しており日々蓄積されています。

情報を活かすためには継続した情報収集が必要であるため、全スタッフが日報入力(情報入力)を継続するためのマネジメントも弊社のノウハウであり、蓄積された情報(テキストデータ)を管理中心の活用から、収益を上げるために活用する経験も弊社のノウハウであると思っています。

実際に、蓄積された情報(テキストデータ)の活用例をご紹介します。

1.トップアプローチ研修のコンテンツの改善・改良
あるべき論ではなく、受講者が身近に感じて当事者意識を感じるコンテンツ作りのために、実際に経営陣へアプローチして成功・失敗した経験(情報)をベースとして活用し、常にリニューアルしています。

2.PROナビシステムの改善・改良
自社で開発した商品は、「市場のニーズがあるだろう」という売り手側の仮説に基づいているにすぎません。実際の市場での検証結果と照合し、検証結果に差があれば受注は困難となるため、お客様の評価や効果といった検証結果をテキストデータで残し、関係者と情報共有を行い、市場が求める商品への対応策を立てるために活用しています。また、担当者が変わった場合などの引継ぎ情報にも活用しています。

3.SIビジネス
スクラッチ開発は、パッケージ販売に比べるとトラブルにつながる要因が多いため、弊社ではユーザとの打ち合わせや取り決め等のエビデンスをデータとして残し、トラブルによる被害の最小限化を目指しています。また、モノづくりを通じてビジネスの業務知識を得ることはもちろん、商品導入後のお客様の効果を検証し、それらを情報収集・共有してソリューションを理解しています。

4.AIによるリスク通知の改善・改良
大量の情報・データの中から、リスクの可能性を含んだ表現をAIで抽出する仕組みは、蓄積されたテキストデータを活用して、AI学習のための教師データや、学習方法・運用方法をいろいろな角度から検証し、他社との差別化を図っています。

5.その他
現在、日経クロステックの有料会員向けコラムを弊社役員が担当しています。「新米SE営業のための文章コミュニケーション」というテーマの連載で、購読上位にもランクインしましたが、このコラムも、40万件強のテキストデータを活用し、実際に経験した過去の商談情報を基に書いています。

日報の情報を、管理目的のみで活用するのであれば、スタッフが入力する情報量は減少するか飾られた情報になりがちです。弊社では、貴重な市場の情報として活用していることが、スタッフの入力が継続している要因の一つであると思っています。

※1:PROナビ
弊社開発のPROナビ(組織営業力強化システム)は、業務の管理が目的ではなく、お互いの情報を集めて、お互いの長所を伸ばし、お互いの弱点を少しでも克服するための人材育成を目的にしています。

※2:スケジュールデータを除く。

 

アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙