今から10数年前のことです。ある日、弊社メインユーザの1社から私に電話が入りました。「御社とは長く取り引きさせてもらっているが、システム構築費用が高すぎる。もう少し価格を下げてほしいと営業の方にお願いしたが、価格引き下げはできないと断られた。価格について再考してもらえないか。」ここまでの話であれば、営業上よくある値引交渉です。しかし、その続きの内容に、私はリーダとして危機感を持つこととなりました。「うちも、ただ単に値引きをしてくれと言っているわけではない。御社からは営業とSEが担当として来ているけれど、うちにしてみれば別に営業に来てもらう必要はない。SEが見積り提案を持って来れば事足りる。御社にとっても、二人来る工数が一人になるのだからコスト下げることは可能でしょう。」

当時、弊社の状況は、技術部門であるSEが提案書の骨子を作成しており、それに営業のマージンを上乗せして見積りをしていました。加えて、長く取り引きをしていると、お客様にとっては要望を伝える窓口が営業だろうと技術だろうと関係なく、SEが営業的な活動を行っていることが多かったのです。つまり、客観的に見ると、前述のユーザが指摘した通り、営業担当が存在しなくてもプロジェクトは成り立つ状況だったのです。

特に必要のない営業工数に、ビジネス市場がいつまでもコストを負担してくれるわけがありません。つまり、お客様から必要とされる営業部門を構築しなければ、会社の存続にもかかわる事態となるのです。この件をきっかけとして、私は営業の意識・行動改革に取り組む決断をしました。
・従来SEが作成していた提案書の骨子は営業が作成する。
・お客様の課題の抽出とその解決方法の策定は営業が対応する。
・課題解決にあたって、その裏付けとなる技術の習得と蓄積、もの作りがSEの業務。
これらを明確に決めて営業部門に指示をしました。

しかしながら、一向に営業活動に変化が見えず時間だけが経過していったため、営業会議の場で「このままでは、社内で営業部門が最大のコストセンターになる!」と発言しました。私のこの発言は営業部門内で大きく反感を買い、営業部門のリーダより「スタッフを何とかなだめてほしい」と依頼されるほどでしたが、「営業スタッフ全員が今のままの営業活動を続けるのであれば、仮に全員が退社することとなっても構わない。」と私はそのリーダに告げました。会社の将来にとって、営業の意識・行動改革は必要不可欠であるという強い思いがあっての発言でした。その結果、実際に何人かのスタッフが会社を去ることになりましたが、現在活躍している営業スタッフはすべて、お客様の課題と解決方法を考えて提案書を作成しています。また、「SEが見積り提案を持って来てくれれば事足りる」とお客様から言われることもありません。営業スタッフは、そのスキルを持って新たな収入を求め新規開拓(新たな
ユーザ、既存ユーザであっても別の部署への営業活動)を中心に活動しています。

お客様の声により決断した営業改革への道筋が、今現在、明確になったと実感しています。
           
                              アスクラボ株式会社 CEO 川嶋 謙